「この建物って何なんですか?」~武蔵小山の洋館について

三丁目バールが営業している建物は、武蔵小山・西口商店街で戦前から昭和50年代まで質屋業を営んでいたY氏の私邸として、1932(昭和7)年5月27日、当時の祝日「海軍記念日」に合わせて完成しました。
施主は関東大震災で被災した経験から、災害にも耐えうる丈夫な住居を建てたいと
考えていましたが、同時に設計士や大工と共に日比谷や丸の内の当時最新の建築物を
視察し、モダニズム建築の要素も取り入れていきました。

基礎構造は木造ですが、施工した大工の技巧によって強固な松材を鉄筋で補強し
剛性を高めています。
外壁は旧帝国ホテルが採用し昭和初期に流行したスクラッチタイルが施されています。室内にはアールデコ調の照明や繊細な模様入りの窓ガラス、職人の遊び心溢れる
ステンドグラスなど、施主の自由な発想が随所に反映されています。    
機能面でも当初から上下水道、都市ガス、電気といった現在と同等のインフラが整っていました。また完成当初は3階があり、バスルーム、物干し、家庭菜園等がありました。

その後太平洋戦争末期の1945(昭和20) 年 5月24日、 東京南西部は”城南空襲” と呼ばれる米軍 の大規模爆撃に見舞われ、一帯は焼き尽くされ、この建物にも焼夷弾が落ちました。幸い不発弾だったため火災は起きなかったものの、爆弾が落下した衝撃で3階は破壊され2階の天井から空が見える状態に。そのため戦後新たに屋根を築き2階建となりましたが、建物の大半はほぼ建築時のまま現存。激動の歴史の証しとして当時の姿を保ち今日に至っています。